
すごい本を読んだので取り急ぎ書評を。
おともだち内閣文部科学大臣の本田スパニエルです。
読書の秋ですね。というわけで、私は最近小飼弾が選ぶ最強の100冊+1を読んでゆくというキャンペーンをやっているわけですが、すごいのがあったので報告です。
アフターマン。人類が滅亡したあとの地球で、生物界がどう変化するかということを描いたフィクションとノンフィクションの狭間を駆け巡る科学本です。
これが・・・、おもしろいんだ。
子供に読ませたい本暫定ナンバーワン。や、むしろ幼少期の「私」に読ませてやりたい。
著者(ドゥーガル・ディクソン氏)は、人類滅亡から5000万年後の学者かなにか(宇宙人?)の視点になりきっています。さも、長い間地球を観察していたかのように、冷静な文体で、それっぽく書いているのです。
進化ってのは、結局のところ遺伝子の突然変異が原因で起こると言われています。突然変異は完全なランダムです。
だとすれば、ある一定の確率で変化した突然変異種が無数に生まれることになります。けれど自然界は弱肉強食ですので、他の種よりも有利な形質を獲得した突然変異種が生き残っていくわけです。
こうして生物はその環境に適応した最適解を見つけるために、試行錯誤してゆくのです。
たとえば、寒冷地に住む動物は体が大きいものが多く、逆に砂漠などの高温の地では小さいものが多いらしい。
これは、寒冷地ではできるだけ体温を逃がさないような仕組みが要求されますので、体積に対する表面積の割合が少なくなければいけないためです。
このようにして、似た環境に住む動物たちに一定の法則を見出すことができます。
ですが、私が思うのは、その環境に対する普遍的な最適解というものは存在しないだろうということです。
現存する生物たちは、既に絶滅してしまった種よりも、現在のその環境への適応力が高かったということは間違いないでしょう。けれど、それらの種はベターであったけれども、ベストではない。ベストな形質なんてものはもともとあるはずもないのです。
たとえば、さっきの例で言うと、体の大きい動物が寒冷地でベストな形質ではありません。体が大きいという物理的な制約が逆に弱点になっていることもあります。そのため、ある突然変異種が体が小さくても体温を維持できる仕組みを手に入れた場合、その環境では彼らがベターになるのです。
こうして生まれた新種もまた、ベストではありません。
あくまで、「その瞬間」、「その環境」への適応力が比較的高いとしか言えません。なぜなら、環境というのは常に変化するからです。
この本では、5000万年後の地球の大陸図も、プレートテクトニクスから予想しているのですが、地形的な構造だけが問題になるわけでもありません。本書でもおもしろい例が紹介されていました。
熱帯ジャングル環境の話ですが、ネコ科の動物がですね、手を180°自由にまわせるようになって、しかも物をつかめるようになると言うんですね。
こういったことが、革命なんです。
ジャングルでは本来、木の上はサルの独壇場でした。サルよりも樹上で自由に動ける敵はいないのです。
ですが、肉食のネコが物をつかめるとなると当然狙いは木の上ということになりえます。そうすればサルたちの夜もねられない生活が始まります。このネコからの攻撃をうまく回避できなかったサルたちは今までの棲み家を追われることになります。
著者はこうして一気に進化が起こると言います。
要するに、生物圏はいっろんな要素が複雑怪奇にからみ合って成り立っているのです。ですから、ほんのちょっとの変化が大きな変革を後にもたらす、バタフライ効果のようなものが実際にあるんですね。
ですから、著者が予想した未来は外れているでしょう。そもそも、人間が滅亡するという前提ですし。
著者は、そんなことは百も承知だと思います。また、この本のおもしろさはそういう所にあるのでもない。
本書を読めば分かりますが、吹き出しそうな動物が次から次と出てきます。パラシュリュウなんかは典型です。
けれども私は、ディクソン氏の頭にはもっともっと奇抜な発想があったのだろうと思います。だけど、「これじゃあ生存競争に負けるようなぁ」と冷静に考えて、しぶしぶとりやめた、そんな姿が想像されるのです。
本書には、人類がなぜ滅亡したか、人類滅亡をどう阻止できるか、みたいなことには一切言及されていません。進化のメカニズムに関する説明は少しされていますが、それでも一般の書に比べれば不完全なものです。
アフターマンを一言で要約するなら、「科学的見解に基づいたディクソンの惜しげもない空想の産物」です。
私は天才に生まれたかった。
天賦の才を持って、思い描く理想像が明確にあるのです。
それは決して世の中をよくするとか、豊かにするとかいうことではない。
究極に無意味なことを、あらゆる学問を総動員させて、それっぽく開発、分析したい。天才的リソースの全てを無意味なことに費やしたい。
つまり私は「アフターマン」を生み出すような男に生まれたかったのです。





