
久しぶりでございます。文部科学大臣の本田スパニエルでございます。
少し前の話になりますが、2次元キャラクターとの結婚を認めてほしいと政府に訴える署名運動が行われておりましたね。
本気の人もいれば、冗談半分な人も、そしてその運動に冷ややかな目を向ける人たちも、いろんな方がおられたことでしょう。
今回わたくしが言論させていただきますのは、その中でも、かのようなネットの住人に対して「現実逃避」だと言って蔑むような態度を見せる方々に対してひとこと申したいと思っておるわけでございます。
わたくしはおそらく日本で初めての、「2次元画像に萌える男たちの超現実主義者説」の提唱者です。
その自論の根拠は、すこし時を遡ります。
まず西洋絵画の歴史を辿ってみますと、やはり極めて厳密な遠近法を用いた構成に気が付きます。
古来から合理的な思考を得意とする西洋文化にしては、やはりと言うかさすがと言うか、かっちりとした絵を描くわけでございます。
ところがどっこい、いつまでもその数学的な理論的な絵画を描き続けるものと思いきや、日本の絵画構成に影響を受けるなどして、美術の歴史は変動を見せ始めるのでございます。
時期的には、印象派、ポスト印象派あたりのところでしょうか。
セザンヌ、ゴッホなどの奇才が登場するのを皮切りに、それまでのかっちり遠近図法主義に疑問が投げかけられるようになるのです。
つまり、机を描きたいとするとき、数学的な遠近法によって線を引き、図を構成していくことは”現物”を描いたと言えるのか、ということです。なぜなら、我々が机を見るとき、たとえば机の右端を見るときと、左端を見るときでは若干視点が変わってしまうので、構図にずれが生じてしまうはずだからです。
実はセザンヌの作品には、このような微妙なズレが再現されている個所が見られるそうです。
これはのちのキュビズムだとか、シュルレアリスムに影響を与えます。
結局、3次元の世界を2次元平面に正確に描きこもうとすることに無理があるということです。我々の見ている世界はそんな世界ではありません。目だって2つあるんです。右目と左目で別々に見た映像を脳みそでうまい具合にブレンドした映像、クオリアを見ているわけなのです。
この事実を受け止めた上で、絵画を平面的なものとして描くという一連の活動には興味深いものがあります。ピカソを代表格とするキュビズムは、様々な視点から見た図を一平面に凝縮する。
これは我々の見ている世界の真髄を捉えかけています。
シュルレアリスムになると、さらに「現実とは何か」という問題に踏み込んでいきます。
シュルレアリスム御一行になると、無意識の世界こそが現実であると主張しやがります。つまり夢で見る映像のような、意識的でない、主観を排除したものこそが最高の現実なのではないかと。つまり、脳みその中で勝手にかちゃかちゃやってることがこの世の本質なのだと。
そういうわけで、偶然性を重視した、たとえば無意識の落書きのような、そんな夢心地の作品を創り始めるわけです。
ここまで言えば、もうわたくしが何を言いたいかお分かりのことでしょう。
2次元画像に恋をしてしまう男たちは何かと冷ややかな視線を浴びせられがちですが、あえて彼らを擁護するならば、「じゃあ3次元は現実なのかよ?」ということです。
我々は結局3次元の世界を2次元に落としこんだ世界を見ているんです。それならば、2次元こそが現実に近いのではないでしょうか?
2次元変換された3次元の女性なんてまやかしなのではないでしょうか?
それにこういった解釈も可能です。
そもそも自分の容姿や言動に自信を持てない者たちが、生身の人間に憧れるということ自体が現実逃避ではないでしょうか?
自分の立ち位置を受け入れた上で、「2次元しかない。」という選択をされた方々はある意味で現実主義者であるのかもしれません。
現実とは何かと考え始めるとさらに不気味な様相を呈してきます。
そもそも「生身の男性は生身の女性に恋をする」という現象が、実は帰納的な推論に過ぎず、一種の強迫観念としてこの世に存在するものだとしたらどうでしょうか?
だとしたら、むしろ彼ら2次元愛好家の掘り起こした無意識の現実(2次元に恋をするということ)は、功績とも言えるべきものではないでしょうか?
インターネットは無記名書き込みができるという点から見ても、本能的なメディアだとも言われます。インターネット発の2次元萌え集団はある意味で本能的、本質的だとも言えるのだと思います。
もう一度言います。2次元に萌える男たちに「現実逃避」だと言って冷たい視線を向ける方々に、それじゃああなたの考える現実って何ですか?と問いかけたい。現実とは何かをまともに議論しないで、やれ逃避だ、防衛機制だ、ニートだなどと言うものじゃありません。よっぽど彼らのほうが現実を捉えています。
なに?現実とは何か考え始めることにまさる現実逃避はない?
黙りなさい。そこのあなた。



